48方美人は終わらない

SKE48にはもう戻ってこない。そう断言して色々と転々した挙句、おめおめと戻ってきたくそDDの備忘録。

変わる強さ、変わらない強さ。

2022年11月5日。

私、時田は、石黒友月さんに歴史的な『敗北』を喫した。

一晩経った今、この文をしたためている訳だが、未だになぜああなったのかよく分かっていない。そんなはずはない、という言葉を反芻しながらも、思い浮かぶのは彼女の笑顔。これまで観たことが無かった笑顔。

私は、昨日初めて、石黒友月さんのキラキラスマイルを目の当たりにした。

 

 

2022年11月5日。

SKE48劇場で上演されたチームS『愛を君に愛を僕に』公演には、フロントメンバーを張るはずの野村実代さん、青海ひな乃さんの姿が無かった。

ただ、それ自体は決してイレギュラーでもなく、さして問題でもない。むしろ、運良く同公演の初日に馳せ参じることが出来た自分としては、両名の凄さは十二分に知っていた。

 

私が観たかった、感じたかったのはそれ以外の部分。初日から約半年を経て、変化はあるのか。そして、その変化は良質なものと言えるのか。

結果から言えば、『想定の範囲内』の良さだった。この表現は曲解していただいて構わない。いや、むしろ、曲解していただいた方が私の感じた印象に近しいと思う。

でも、その中で二つほど、『想定外』だった事象が生じた。

 

 

一つは、石黒友月さんの存在だ。

完全に、ノーマークだった。前述の通り、フロントメンバーの一人である野村実代さんが休演だったため、そのポジションに彼女がおさまっていた。その情報は事前に把握していた訳だが、忌憚の無い言い方をすれば、あくまで代役という認識でしか無かった。そこに化学変化が起きる、という予兆を感じて無かった訳である。

 

私の中での彼女の印象というのは、表面と内面に凄くギャップのある子、だった。お人形さんのように綺麗に整った顔立ち、メンバーから脚長おばけと形容されるモデル体型、キラキラスマイルと謳われる笑顔……とは裏腹に、所作の端々、表情の端々から少しだけ感じ取られる人間臭さ、なにくそ魂が見え隠れする。言葉を選ばす表現するのであれば、こんな感じである。

 

それでいて、そんな内面を舞台上で感じ取るのが難しい、私にはとても困難だ、と思わされたメンバーだった。

石黒友月さん推しの知り合いの言葉を借りると、『熱意や野心をしっかり持っているけど、周りを気にするあまり、中々外に出せないタイプ』のようだ。なるほど、そう言われると合点がいく。

 

そんな印象の彼女だったからこそ、昨日は本当にノーマークだった。

立ち位置的にソロを歌う機会が多く、前面に顔を出すことも多い。注目すべきは、歌い終わり。後列に移動する直前、全体を見回した刹那に見せる彼女の笑顔は、とても人間臭くて、前に立つ喜びを噛み締めている笑顔だった。能面に貼り付けたような、無味無臭の笑顔のようなもの、とはまるで違う。

 

あぁ、これがキラキラスマイルか、と。

 

終始、そんな感じだったので彼女の振りやスケール感をまるで覚えていない。ずっと彼女の表情を、笑顔を魅せつけられていた。

 

変わることを恐れていた彼女が、変わろうとしている瞬間を目の当たりにした、これが昨日の大きな収穫だったと思う。有難う、石黒友月さん。

 

 

二つに、手前味噌ながら、中坂美祐さん。私の、なので手前味噌と書かせていただこう。え?独禁法??知らん、そんな外国の法律。

 

私が彼女に対して、想定外だったのは『変わらない強さ』だ。新公演初日、劇場で観た彼女は本当に大きく変わっていた。それまでの彼女とは別人の、れっきとしたメンバーであり、パフォーマーだった。

それが要因かどうか定かではないが、彼女は着実にファンを増やしている。露出も明らかに増えている。着実に自信をつけていて、イキイキしている。今本当に、ノっているメンバーだと思う。

そんな姿をDD寄りの一ファンとして見ていたので、当然、劇場での姿にも期待をしてしまう。期待と不安を滲ませながら、当日は青白オレンジサイを強く握りしめていた。

 

そして。

 

改めて、その凄さをくっきりと認識させられた。彼女には、しっかりと『魔法』がかかったまま、だった。

『魔法』というのは、チームSを指導してきた牧野アンナ女史の発した言葉を指す。

新公演初日の舞台前、緊張や重圧でガチガチになるメンバー達にかけた一言。

 

『今日は楽しみなさい』と。

今までやってきたことを信じて、あとはしっかりそれを解放するために楽しみなさいと。

※状況、一言一句知りたい方はyoutube公式チャンネルのドキュメンタリーを是非観てください。

 

この言葉に背中を押され、メンバー達は新公演初日を素晴らしいものに仕上げた。

 

そして、今思うと、この言葉こそ、本当に重要な一言だと私は思う。

半年も経てば、やはり物事の鮮度は失われていく。公演は、生物だ。ましてや、年頃の子達が持つ敏感な感度は良い方向にも、悪い方向にも働く。

鮮度を保つことは、本当にとても難しい。

時の経過を、熟成とするのはもっと難しい。

 

 

つまりは、変わらないことこそ凄く難しいのだ。

そんな中で、中坂美祐さんは変わらないものを持っていた。

アンナ女史の『楽しみなさい』という魔法をかけられたまま、公演を、踊ることを、本当に楽しんでいた。変わらぬ鮮度で、変わらぬ熱量で。

もし仮に、この文章を読んでくれている物好きの中で、まだSKE48 チームS公演『愛を君に愛を僕に』公演を観ていない方がいれば、是非中坂美祐さんに注目して欲しい。いや、注目しなくてもいい、注目せざるを得なくなるから。

 

 

まだ、私は彼女を侮っていたのかもしれない。

 

まだ、私は彼女達を侮っていたのかもしれない。